TRANSCREATION BLOG

  • 小塚 泰彦

「良質な違和感」


トランスクリエーションをご提供する事例が増え、その過程で気づいたことをまとめます。


トランスクリエーションカンパニーmorph



足りないものは「良質な違和感」だった


現在弊社では、日本語から英語へのトランスクリエーションが多数を占めています。その次に、ゼロから英語の言葉を生み出すトランスクリエーションが続きます。


ご提供の際に、かなりの確率で依頼主に響くのは「良質な違和感」という手法とその実践です。


企業における有名な事例を挙げると、Apple社1997年のスローガン”Think Different.”。文法的には”Think Differently”でなくては正しくありません。英語ネイティブにとっては「あれ?」と一瞬思いながらも、あえて文法的に間違えている”Think Different.”という言葉の強さが心に響きます。


また「良質な違和感」は詩や小説、とりわけそれらのタイトルによくあらわれます。谷川俊太郎さんの詩集『夜のミッキー・マウス』はたった数語のタイトルによって、「あのミッキー・マウス」のいつもと違う姿を想起させ妄想がふくらみます。最果タヒさんの近著は『天国と、とてつもない暇』というタイトル。「天国」と「暇」という、普段は結びつかなさそうな言葉の並置で、独特の世界への扉がひらかれます。


異化効果


トランスクリエーションを「翻訳」でありかつ「人間の創造性開発」でもあると考えている私にとって、トランスクリエーションの基礎となる考え方の一つに「異化効果」があります。


異化効果は、主に小説や演劇で使われる技法。ロシア・フォルマリズムの作家ヴィクトル・シクロフスキー(Viktor Shklovsky)に端を発し、ドイツの劇作家、ベルトルト・ブレヒト(Bertolt Brecht)が自身の演劇理論の一つとして提唱しました。日常的で当たり前と思われている事柄を見慣れないものに変え、観る人が固定概念から解放され新たな視点を獲得する手法とされています。


英国の作家デヴィッド・ロッジ(David Lodge)が『小説の技巧』の中で、異化のことを「独創性の同義語」と言い表しているように、言葉や振る舞いのちょっとした違和感は、それを観る人を思考の枠組みから外へ連れ出す作用があるようです。


経営の言葉にポエジーを


良い詩はたった数語で、この世には別の次元があるように思わせ、優れた小説はたった数行で、これまで見えていたのと違う世界を見せてくれます。ほんの一行の、質量も温度も匂いも味もない「言葉」を目にして涙を流すことさえあるというのは多くの人にとって決して稀なことではありません。


企業の言葉が必ずしも全て詩的であるべきではありませんが、それでも、経営を実践する言葉に「ポエジー」が足りないように私は思います。「ポエムのような言葉」ではなく、ポエジーのある言葉。


いわゆる広告のキャッチコピーなどでは昔から実践されてきたことではあります。しかし、それが「翻訳」される時点で、欠落してしまう。トランスクリエーションは、そのギャップを創造的に埋める営みです。


「良質な違和感」にはポエジーがあり、その言葉を受け取る人に何らかの独創性を伝えます。トランスクリエーションがトランスレーションと似て非なるものであるのは、その独創

性にあるように私は思います。


機械翻訳の高度化によって「直訳」が大量生産大量消費される時代が到来しています。創訳®(トランスクリエーション®)による「意味の豊かさ」を見直す時代が、その先に見えているはずです。トランスクリエーションの視座は、機械翻訳のその先にあります。


トランスクリエーションカンパニー morph


#トランスクリエーション #トランスレーション #創訳




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